今月の法話 平成31年の法話

今月の法話(平成31年3月)


法華経(ほけきょう)はいのり(祈)とはなり(そうらい)けるぞ。あなかしこあなかしこ。いよいよ道心堅固(どうしんけんご)にして今度佛(こんどほとけ)になり(たま)へ。

 

『四條金吾殿御返事(四條第廿五書)』

弘安元年10月。祖寿57歳。全:p917 定:2巻p1593

あなかしこ

  祈りとは、私たちの切なる願いを神仏に訴え、そのご加護を乞う行為です。ですから、祈りが神仏に聞き届けられることなく、霊験奇蹟による救いが現れることもないのであれば、祈る甲斐がないことになります。

法華経は、八巻二十八品六万九千三百八十四文字によって構成されていると言われますが、その中に「祈」の文字は見当たりません。観世音菩薩普門品に「念彼観音力」という句があり、陀羅尼品に薬王菩薩・勇施菩薩・毘沙門天王・持国天王、鬼子母神・十羅刹女の、勧発品に普賢菩薩の、各々陀羅尼と擁護が説かれている程度です。

いま、日蓮大聖人さまが、法華経は祈りとなると仰っているのは、観音力や陀羅尼神呪のことを言っておられるのでしょうか。そうではありません。もっと深い教理から導き出された、南無妙法蓮華経のお題目を祈りに用いることを仰っておられるのです。一心にお題目を唱えてお祈りをすると、奇蹟が現れて、心願が成就します。その大聖人ご自身のご体験を、このように仰ったのです。

何故そのような不思議が起こってくるのでしょうか。それを知りたければ、少なくとも法華経全巻を拝読し、天台教学、殊に一念三千の法門を学び、大聖人がお立てになった五綱教判と、一大秘法、そしてその行門である三大秘法を領解し、その上で、事の一念三千という信解脱を体験しなければなりません。そうすれば、得心が行く筈です。とは申せ、聖徒の皆さんに、そこまでしていただく必要はありません。

肝腎なのは、祈りの不思議を体験することです。しかし、それだけでは、「あなかしこ」という、祈りの有り難さを讃歎する言葉を発するまでには到れません。お題目の功徳を十全に受け取り、即身成仏して何も言うことはないという大安楽、大法悦、大満足の境地を開き、「ああ畏れ多い、ああ勿体ない、ああ有り難い」と声を上げたいものです。

道心堅固とは、必ずしも道徳堅固のことではありません。仏願仏業を相続して、いのち賭けでお題目の信仰を貫くこと、全身全霊を捧げて南無妙法蓮華経の道を持ち、行い、護り、弘めることです。それこそが、神仏のご加護を得、成仏する手立てです。あなかしこ。

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