令和7年の法話 今月の法話

今月の法話(令和7年6月)


みょうほう光明こうみょうにて(照)らされて本有ほんぬ尊形そんぎょうとなる。
これ本尊ほんぞんとはもうなり

『日女御前御返事』建治三年八月。聖祖五十六歳(一二九三頁)

ほんそんぎょう


「トランプ関税が大問題になっています。結局、我が国との貿易で赤字が大きいこと、特に自動車分野において、アメリカの自動車が日本で全く売れていない、ということを問題視し、アメリカ車の輸入拡大を求めていると評されています。
 「二十世紀は自動車の世紀」と言われました。自動車が社会に普及し、人びとの移動手段を大きく変え、郊外の開発、物流の変化、新たな産業の創出など、社会構造そのものに大きな変化をもたらし、私たちの生活や価値観に深く影響して文化としても浸透したからです。昨今は「自動車は白物家電化した」とも言われていますが、まだ自動車の時代は続いているのかもしれません。
 一台の自動車を作るには、先ず、綿密に計算され、最適化された設計図が必要です。しかし、設計図がどんなに優れていても、実際の部品が粗悪なものであったりすれば、設計通りの性能を発揮できません。耐久性や安全性が損なわれてしまう可能性もあります。そして、その部品を正確に組み立てる技術が必要です。約三万とも言われる全ての部品がミリ単位、いやそれ以下の精度で組み合わされることで、初めて設計図が意図する機能、性能、そして安全性が実現するのです。
人間社会も同じことです。一人ひとりの個性が最大限に活かされ、相互に尊重し合い、調和することで、より良い全体を築き上げることができるのです。
 聖徒団では、これを「総和」と呼んでいます。
「本有の尊形」とは、私たちが生まれ持っている尊い姿、ということです。お題目すなわち「妙法五字」の光明に照らされて、私たち衆生の「本有の尊形」である佛としての姿となるのです。
 日蓮大聖人が顕された御本尊は「文字式の大曼荼羅」でした。中央に大きくお題目が書かれて宝塔となり、「四大天王は宝塔の四方に坐し、釈迦・多宝・本化の四菩薩肩を並べ」るのみならず、十界の全ての衆生が漏れなく住せしめられているのです。すなわち、大曼荼羅は完全なる浄土の「設計図」であり、私たち一人ひとりが「本有の尊形」を表してこの大曼荼羅の一員となることによって、世界は真の浄土となるのです。
 だからこそ、御本尊は大曼荼羅でなくてはなりませんし、大曼荼羅が御本尊となるわけです。
私たちは本来、一人一人みな佛です。しかしそのことに私たちは気づいていません。お題目の信仰によって、自らが佛であることに気づき、「本有の尊形」を表すことができるのです。一人ひとりが佛と成り、その佛が総和することによって、佛界=理想世界が形成されるのです。

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