今月の法話 令和2年の法話

今月の法話(令和2年8月)


釈迦如来(しゃかにょらい)(おん)ためには提婆達多(だいばだった)こそ第一(だいいち)善知識(ぜんちしき)なれ。(いま)世間(せけん)()るに(ひと)をよくなすものは、かたうど(方人)よりも強敵(ごうてき)(ひと)をばよくなしけるなり。

 

『種種御振舞御書』建治2年。聖祖55歳 全:P787 定:巻2 P971

善知識(ぜんちしき)

提婆達多は、仏教史上の悪人の代表です。釈尊の従弟で、釈尊の弟子となりましたが、驕慢の心を起こし、釈尊に敵対して、分派して新教団をつくり、五逆罪のうちの三つ(出仏身血、殺阿羅漢、破和合僧)を犯し、生きながらにして地獄に堕ちたとされます。

その提婆達多が、善知識(善い友。人を仏道に入らしめる人、自身を化導利益してくれる人)であるというのは、法華経提婆達多品の教えです。

提婆達多品には、釈尊のことばとして「等正覚を成じて広く衆生を度すること、皆、提婆達多が善知識に()るが故なり」と説かれています。

「人間を良く成長させるものは、方人(仲間。褒めたり、贔屓(えこ)してくれる人)よりも、敵対する強敵である」というのは、お祖師さまの実感であられたのではないでしょうか。

そして、その提婆達多をも成仏せしめて救うのが法華経であることは、申し上げるまでもないところでしょう。

今を去ること一億年ほど前、中生代白亜紀、恐竜が地球の主であった頃のことです。人類の遠い祖先、恐らくはネズミの原型のような哺乳動物がいましたが、あるウイルスに感染してしまいました。そのウイルスは、私たちの祖先の生殖細胞にまで入り込み、遺伝子の一部となり、何と現代の私たちにまで伝えられています。

この遺伝子は、胎盤の形成に大きな役割を果たしていることが明らかになっています。もし、私たちの遠い祖先がそのウイルスに感染しなかったら、私たちは今でも卵で生まれているかもしれません。否、卵生のままでは、哺乳類が人類にまで進化することはなかったことでしょう。

ウイルスにしてみれば、宿主の遺伝子に入り込んで、自己の複製を残せるようになり、生き残ったのです(ウイルスは生物ではないと言われますけれども)。私たちの祖先、そしてその子孫である私たちから見れば、ウイルスを遺伝子の中に組み込むことによって、大いなる進化を遂げることができたのです。

私たちの祖先は、肉体によってしかウイルスを善知識にすることはできませんでしたが、私たちには智慧があり慈悲があります。私たちは祈ることができます。

私たちは新型コロナウイルス感染症を善知識とすることができるでしょうか。それは、私たちが地涌の菩薩として、祈り、悟り、行うことができるかどうかに掛かっています。

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