紙上法話

神聖な山で知る 感謝の心

観光気分の登山客に忘れられた山の神


 5年前に富士山が世界遺産に登録され、世界中から登山客で賑わっています。非常に残念ですが、観光気分でペットの連れ込みや、ゴミのポイ捨て、たき火などのマナー違反が後を絶たないそうです。

 

 昔から山は神聖な場所とされ、山自体が神さまの体「ご神体」であると崇められてきました。それが山岳信仰や修験道へと発展し、女性の立ち入りを禁じた女人禁制時代もありました。そんな神秘的な山々が数多くありますが、実は法華経も山と大変深い関係があるのです。

 

 「二処三会(にしょさんね)」という言葉があります。それは釈尊が法華経を説法した2つの場所と3つの法会(ほうえ)をいいます。「二処(にしょ)」とは霊鷲山(りょうじゅせん)虚空(こくう)、「三会(さんね)」とは前霊鷲山会(ぜんりょうじゅせんえ)虚空会(こくうえ)後霊鷲山会(ごりょうじゅせんえ)のことです。

 

 序品(じょほん)第一から法師品(ほっしほん)第十までは「霊鷲山」を舞台に展開されます。次に見宝塔品(けんほうとうほん)第十一で巨大な宝塔が大地から湧き出して空中に浮かび、宝塔に釈尊と多宝如来の二仏が並んで座わり、大衆も空中に舞い上がります。この「虚空会」での説法が属累品(ぞくるいほん)第二十二まで続きます。

 

 そして、薬王菩薩本事品(やくおうぼさつほんじほん)第二十三になると先ほどの「霊鷲山」に再び場所を戻し、普賢菩薩勧発品(ふげんぼさつかんぼっぽん)第二十八まで説法が展開されます。つまり法華経の16品は霊鷲山という山で説かれているのです。

 

 日蓮大聖人さまも山と深い関わりがあり、晩年身延山に隠棲され、弟子や信徒を育成されました。

 

 その身延山には高座石といわれる石があります。ある日、石の上で日蓮大聖人さまが説法をしていると聴衆のひとりに高貴な女性がおり、説法を聞き終わると、龍の姿となって「私は、七面山(しちめんざん)に住む七面天女(しちめんてんにょ)です。身延山の鬼門をおさえて、お山を守る法華経の守護神として、これから法華経を信仰する人々をお護りします」とお誓いし、七面山の方へ飛び立ったという伝説が残っています。

 

何事もないことへ ありがとうのお題目

 その七面山の山頂付近に敬慎院(けいしんいん)というお堂があり、七面大明神さまがお祀りされています。そこには「感應(かんのう)」と書かれた額が掲げられています。

 感應とは寿量ご本仏さまを求める私たちの心と、それに応じて下さる寿量ご本仏さまとの心が通じあうことです。感應は「感謝に神仏が應じる」という意味で、ただ祈るだけでは感應は起こらないのです。

 

 倶生霊神さまは、苦難から救済するために、寿量ご本仏さまの使命を受けて、常に私たちを護衛くださっております。このご守護に感謝して「南無妙法蓮華経」とお題目を唱えることが大切なのです。

 

 良いこともなく、喜ばしいことも何もないなど、毎日がただ何となく過ぎていくことに不平不満を持つ人も少なくないでしょう。しかし裏返せば「無事平穏のご加護」とも言えるのです。

 

 慢心することなく、毎日無事へのおかげさまの心で感謝するお題目に、寿量ご本仏さまや倶生霊神さまはお応えになり、より強くお守りくださいます。

 

 このご守護を感じるためにも、常日頃から肌身離さず、倶生霊神符を着帯することが何よりも大切なことです。

 

 着帯してお題目を心底から信じぬくことで、寿量ご本仏さまや倶生霊神さまと心が通じあい、ありがたい神秘な体験、つまり感應の体験ができるのです。

 

 神聖なる山に住む七面天女さまは、身勝手な私たちへ「感應」という言葉を示して、現代社会が失いかけた仏心を取り戻そうと、見守ってくださっているように思えてなりません。

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