紙上法話

童話「おむすび ころりん」と浄土

穴から聞こえる可愛い歌声


 昔話の「おむすびころりん」は、皆さまもご存じのことでしょう。


昔々、正直者のおじいさんが、山に芝刈りに出かけました。お昼になり、おばあさんが作ったおむすびを食べようとすると、うっかりおむすびを転がしてしまい穴に落としてしまいました。


すると、穴から可愛らしい歌声が聞こえてきたので、もう一つ、おむすびを穴に転がしました。すると、また可愛らしい歌声が聞こえ夢中になっていると、おじいさんまで穴の中に転がり落ちてしまいました。落ちたところはネズミのお屋敷でした。


ネズミたちは、「ようこそ、おじいさん。美味しいおむすびをたくさん、ご馳走さまでした。お礼にお餅をご馳走しましょう」と、歌いながら餅つき踊りを始めました。


おじいさんは、たくさんご馳走になり、そして帰りには、お土産に宝物をもらいました。この話を隣の欲張りおじいさんが聞いて「よし、わしも行って、宝物をもらってこよう」と、おむすびを持って山に出かけて、穴に無理やりおむすびを入れ、自分から穴に入って行きました。


ネズミのお屋敷に着いた欲張りおじいさんは、餅つき踊りを披露されましたが、欲張りのおじいさんは、お屋敷にある宝物をたくさん欲しくなり強奪しようと猫の鳴きまねをしました。するとネズミたちは驚き明かりを消して一斉に逃げていきました。


欲張おじいさんの周りは真っ暗になり穴から出られなくなってしまいました。というお話です。

 

法華経精神で変えよう 慈悲深い浄土へ

 ネズミたちの住む地下世界は、歌って踊って美味しいものを食べ宝物がある浄土と言えます。しかし、強欲な心・自分勝手な心で接すると、浄土は一転し、暗黒の闇の世界・地獄に変化するのです。


ネズミは「根住み」「根の国の住人」と解釈できます。日本神話では、「根の国」は死者が住む他界を意味します。亡くなった方々に食べ物を施し正しい心・慈悲の深い者には宝物を与え、欲張りで自分勝手な者は闇の世界・地獄に残されるのです。


日蓮大聖人さまのお言葉に、
「夫浄土と云ふも地獄と云ふも外には候はず。ただ我等がむねの間にあり。これをさとるを佛といふ、これにまよふを凡夫と云ふ。これをさとるは法華経なり。もししからば法華経をたもちたてまつるものは地獄即寂光とさとり候ぞ。」(『上野殿後家尼御前御返事』1233頁)とあります。この世を浄土にも地獄にするのも自分の心持ち次第、法華経を受持し正しい慈悲深い心を養うことが大切なのです。


さて、新型コロナの関連で、ある身勝手な50代の男性のニュースを記憶していることと思います。その男性は、新型コロナ感染が確認され、自宅待機を要請されたにもかかわらず、「今からコロナウイルスをばらまいてくる」と言って外出したのです。しかも、マスクなしで飲食店に行き至近距離で接客を受け会話をしたり、お店や店の従業員に大変迷惑をかけたのです。


その男性はお亡くなりになりましたが、家族はおそらく男性を素直に弔う心になれず複雑な心持ちで見送られたことでしょう。また、お店は風評被害等にも苦しめられていることでしょう。


もし日蓮大聖人さまなら新型コロナ感染での自粛・逆境の世の中でも、その中から喜びや気づきを見出し、また、根の国の住人をも法華経・信唱受持のお題目へ導かれることでしょう。私たちも倶生霊神符を着帯し法華経信仰を持ち堅固な心を養い、たとえ逆境であってもそこを浄土に変えるようつとめましょう。それが聖徒の本分ではないでしょうか?

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