紙上法話

女子高校生の「恋心」と「お守り袋」

同級生に想いを寄せる女子マネージャーの恋



同級生の男子高校生「祐樹(ゆうき)くん」のことが好きな女子高校生「夢華(ゆめか)さん」がいました。祐樹くんと同じバスケットボール部に入部し、マネージャーとなったのですが、どうしても告白できません。なぜなら祐樹くんには彼女がいたからです。


三年生になり、最後の大会が近づいてきました。お世辞でも強豪校とは言えないけれど、祐樹くんはひたむきに練習に励んでいました。

夢華さんは祐樹くんのために、「何か応援できないか」と思案を巡らせて、思いついたのがお守り袋を作ることでした。ひとりのためだけに作ると怪しまれるため、部員全員分のお守り袋を縫うことにしました。

裁縫は苦手でしたが、一つひとつ心を込めてこしらえました。表に「勝」の文字が縫い込まれていました。多少不格好でしたが一所懸命な想いが伝わってくるお守り袋でした。
夢華さんは全員分のお守り袋を持って私のお寺へ。魂入れをお願いしたいというのです。おばあさまから当山の噂を聞いたとのこと。たしかにおばあさまはお寺の聖徒さん。私は快く引き受けました。

「ところでこのお守りはご存じですか?」私は倶生霊神符のことを伝えました。身に着けることでご本仏さまからより強く護られること、一心に祈ることが大切なので朝晩必ずお題目での祈りとお礼を行うこと、祈ることで必ず願いは叶うこと、そして毎月必ず倶生霊神符を交換することなどを丁寧にご指導しました。

夢華さんは最初は戸惑っていましたが、自分と祐樹くんの2体だけ授かることにしました。それぞれのお守りに氏名と生年月日を書き入れ、2人分を自分用のお守り袋へ入れて大事にそうに身に着けて、本堂のご本尊さまに手を合わせてお祈りしていました。

2人分の霊神符を着帯して…

 試合の結果は惜敗でしたが、その後も夢華さんは毎月お寺に参拝し、倶生霊神符をきちんと交換。

必ず2人分拝受し、自分のお守り袋に2体入れて「南無妙法蓮華経」とお祈りを続けていました。

しばらく経ったある日、私はふと気づいたのです。いつもと同じく2体交換しているのに、自分のお守り袋には自分のだけしか入れなかったのです。理由を聞くと、もう1体は祐樹くんのお守り袋に入れるようになったとか。願いが叶い、交際することになったそうなのです。

聞いてみると、試合後にほとんどの選手がお守り袋を片付けたのに、祐樹くんはそのまま大事にしていたそうです。更に夢華さんの持つお守り袋が他の人より膨らんでいることに気づき、祐樹くんが理由を尋ねてきたのがきっかけで交際に発展したというのです。

あれから約10年の歳月が過ぎました。2人は結婚し、今では都内に住んで幸せな家庭を築いています。
倶生霊神符が取り持ったご縁のお話でした。

「祈りは必ず叶う」という言葉は聖徒の皆さんはよく実感されていることと思います。日蓮大聖人さまもお手紙の中で、

「同名同生(どうみょうどうしょう)の天(てん)、是能(これよ)く人を守護(しゅご)す。心固(こころかた)ければ則(すなわ)ち強し。」

と仰っています。同生天・同名天の倶生霊神さまは、私たち一人ひとりを当たり前のように守護してくださっており、その気持ちがしっかりとしていれば守護も更に強くなるのです。

夢華さんは祐樹くんのことを真剣に想い、一心に祈りを捧げていました。相手の幸せを本気で祈る気持ちはとても素晴らしいことだと思います。

これからもしっかりとしたお題目への信心と祈りの心を持ち続け、より一層の強いご加護をいただいて参りましょう。

-紙上法話

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