首導月訓 平成28年の月訓

首導月訓(平成28年11月)

◆仏教の根本原理を三法印という。「諸行無常」「諸法無我」「涅槃静寂」の三である。前二法印は万古不易の真理である。

◆しかし、この二法印を実際生活に適用するとき、真理に忠実であろうとすれば、非社会人(世捨て人)を理想とすることになりかねないし、社会人を全うしようとすれば、二つの真理に背を向けることになりかねない。

◆この矛盾を解決する道として、釈尊は「涅槃静寂」を説かれた。ところが、その境地は非常に微妙で容易には捕捉できない。

◆この問題を煎じ詰めて行くと、欲を捨てる立場を「涅槃静寂」とする考え方と、欲に囚われない立場を「涅槃静寂」とする考え方に分かれる。前者は出家遁世して非社会人となり、人生を捨てることによって人生苦から逃れるところに行き着く。

◆自分の生命にも生活にも執着をもたないこの境地に到れば、心の自由を得て、さぞ満足した人生が送れるであろうと想像はできるものの、これを人生の極意であるとはどうしてもいいかねるものがある。

◆人生は生命を土台にして成り立っている。生命がなければ、全ては無である。しかるに、生命の営みの上に現れてくる苦悩を逃れるために欲を否定することは、結局のところ生命を否定することに繋がってしまう。

◆故に、欲に囚われない立場を開くことを「涅槃静寂」とする見方に立たなければ、仏法の真義に触れることはできない。

◆仏陀釈尊は、この意味の「涅槃静寂」を中道といい、また正道と仰った。この考え方の延長展開が、大乗仏教思想発展の歴史である。その落ち着き先こそが、菩薩を仏陀如来の常住不滅の活動体としてみる法華経寿量品の思想に他ならないのである。

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