首導月訓 令和4年の月訓

首導月訓(令和4年9月)


◆「宗教はアヘンである」は、かのカール・マルクスの言として知られる。因みに、マルクスと親交があった詩人のハインリッヒ・ハイネに先行類似表現があり、また、更に以前にノヴァーリスにも同様の文言があるという。

◆マルクスのことばは、一般に反宗教主義の辞として扱われているが、出典である『ヘーゲル法哲学批判序論』では、麻薬としてのアヘンでなく、当時の緩和医療での痛み止めとして使用される医薬品を意味していたらしい。

◆ともあれ、このことばに一面の真理があることは否めない。先日の元首相暗殺事件を巡る背景に名が上がった教団の行状により、またも宗教のアヘン性が証明される仕儀となってしまったところである。

◆恒河沙盡きるとも邪宗門の種は盡きない。何故であろうか。

◆釈尊やイエスを例に引くまでもなく、宗教は人間の最も尊く優れた心魂と智慧の結実である。しかし、人の心には十界があり、餓鬼も畜生もその中に存している。餓鬼界、畜生界を主たる住処とする輩が利用するに、宗教ほど便利なものはない。詐欺、イカサマ、ペテンであっても、世俗法上の犯罪となりにくいからである。日蓮系に邪教団が多いのは、お題目の利益の光が歴然であるが故に、それを不法に悪用する影が見えにくくなるからでもあろう。

◆また、どんな教団であっても、信徒は善意の人であることが多い。その善意に触れて、信徒になる人がある。善意が邪教を流布させるのである。

◆人類の最も尊い高貴良好なるものと、最も劣悪奸邪なる部分とが端的に表現されるのが宗教である。そして、むしろ後者ばかりを取り沙汰すのが、現代日本社会の通弊である。

◆「祈り・悟り・行い」の三大秘法により、現安後生の個人成仏と立正安国の社会成仏とを目指す真正日蓮佛教を奉じる我が聖徒団は、このことをよくよく弁えた上で、広宣流布を目指さねばならない。後五百歳は過ぎ、既に折伏の時代ではないのである。

日蓮宗聖徒団首導 髙佐日瑞

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