紙上法話

災難を瑞相に転ずる菩薩行

地震と仏教



 元日からの大地震に日本中が揺れました。「令和6年能登半島地震」により、被害に遭われました寺院、聖徒の皆さんをはじめとする全ての被災者の方々に対し、衷心よりお見舞いを申し上げます。特に、尊い命を落とされた皆さまのご冥福をお祈りいたします。
 聖徒の皆さん方でしたら、法華経の如来神力品の偈頌(げじゅ)に「地皆六種動(地みな六種に動ず)」とあるのをご存じのことと思います。この、大地が六種に動くことを「六種震動」と申します。
 もう少しお経文を読んでみましょう。
 「釈尊と多くの仏さまたちは、人びとを悦ばせるために無量の神力を現します。舌は梵天に届き、身体中から無数の光を放ちます。咳払いをし、指を弾くと、その音が周く響きわたり、大地は六種に揺れました。釈尊が滅度された後に法華経を護持するもの達のために、諸仏は無量の神力を示されたのです。(趣意)」
 大地が動いたのは、仏の神力の故だったのでした。これは、地涌の菩薩が、仏の滅後は自分たちが法華経を弘めます、という決意を釈尊に申し出た際に、仏が現した神力なのです。
 そして、このあと釈尊は、地涌の菩薩に、仏滅後の法華経を委託(付嘱・嘱累)されるのです。
 六種震動は、また、序品などにも見られます。ここでは六瑞という六種の瑞相(めでたいしるし。吉兆)の一つ地動瑞として説かれており、釈尊が説法を始められる前触れとされます。
 六種震動とは、文字通り、大地が六通りに震動することで、法華経に限らず、仏教では一般に、仏が法を説く際の瑞相とされているのです。動・起・涌・覚・震・吼の六種で、動・起・涌は各々、一方に動く、揺起する、涌出する地震の相を意味し、覚・震・吼は、大きな音、隠隠とした音、咆哮であり、地震の音を指します。

災害を瑞相に

 地震が瑞相とはどういうことでしょうか。
 正嘉元年(1257)8月23日、鎌倉を大地震が襲いました。正嘉の大地震です。
 「去ぬる正嘉元年太歳丁巳八月廿三日戌亥の尅の大地震を見て之を勘ふ。」(『立正安国論 奥書』)
 この地震は、日蓮大聖人さまが、『立正安国論』をご執筆になる契機となったのでした。
 しかし、大聖人さまも、後に、この地震を瑞相として捉え直されておられます。
 「今の代には正嘉の大地震、文永大せひせひ(彗星)の時、智慧かしこき国主あらましかば、日蓮をば用つべかりしなり。(中略)大悪は大善の来るべき瑞相なり。一閻浮提うちみだすならば、閻浮提内広令流布はよも疑候はじ。」(『智慧亡国御書』)
 大聖人さまも、ご自身の真の仏教が広宣流布する前触れとして、大地震を意味付けられたのです。
 災害がそのまま瑞相となることはありません。災害を受け止め、それを契機として前進し、文字通り、「災難を転じて福となす」ことがおできになったからこそ、大聖人さまは、これを瑞相と位置づけられたのです。
 日本は地震大国であり、こうした災難を避けて通ることはありません。しかし、こうした災害に屈することなく、災難を立正安国への一大契機とし、真の日蓮仏教の発展の瑞相として行くことができるように、信力を発揮して行くように努めることこそが、聖徒のなすべきことなのではないでしょうか。

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